加賀屋110周年記念スペシャルトーク 「育てる」地域の魅力を守り育み、未来へつなぐ

加賀屋のだしが隠し味に

小田 このたびはお忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。中浦社長には加賀屋の創業110周年を記念したお菓子「のとゆべし」の製造を引き受けていただき、うれしく思っております。柚餅子(ゆべし)は能登のおもてなしに欠かせない伝統的なお菓子です。当館の売店でも大変好評ですし、季節によってお料理の中にも取り入れております。

中浦 中浦屋では明治43年の創業以来、柚餅子の商品価値を守るには変えないことが大切と考えてきましたが、 新たなチャレンジで一歩前進したいと思い、今回の依頼をお引き受けしました。のとゆべしの特徴は、味付けに加賀屋オリジナルの「能登だし」を使っている点です。能登だしには日本三大魚醤の一つで能登のイワシやイカで作った「いしる」が入っています。いしるとユズの相性は抜群で、伝統的な柚餅子とは少し違った風味を楽しんでいただけると思います。

小田 さわやかなユズの香りや、能登だしの旨みが感じられる逸品に仕上げていただき、感謝しております。べっ甲のような色と輝きも美しいですね。 三谷先生におかれましては、昨年文化功労者に顕彰(けんしょう)されましたこと、心からお喜び申し上げます。また、のとゆべしの商品名を揮毫(きごう)していただき、ありがとうございます。父は古くからの大ファンで、当館に展示している三谷先生の作品はご宿泊いただいたお客様に館内を彩る美術品をご案内するツアーでも人気を集めております。

三谷 喜んでいただければ何よりです。加賀屋には石川県内の工芸家の集まりで何度もお世話になり、楽しい時間を過ごさせてもらいました。柚餅子は私自身が好きなこともあって、お世話になった人に贈ることもありますし、気に入ってくださる方には毎年送るようにしています。のとゆべしも大変おいしく仕上がっていると感心しました。

手本になるような最高の仕事を見せるしかありません 三谷吾一氏

一つの菓子の向こう側に一人のお客様を思い浮かべます 中浦政克氏

共感力を大切にしたい

小田 ここからは“育てる”をテーマに お話を進めたいと思います。中浦社長は会社を支える人材を育成するにあたって、どんなことを心がけていらっしやいますか。

中浦 社員には日ごろから一つの菓子の向こう側には一人のお客様がいらっしやるということを意識してほしいと伝えています。当社では毎年数多くの菓子を製造しています。しかし、仮に一つでも満足のいかないものがあったとすれば、それを手にしたお客様に大変なご迷惑をかけてしまうことになります。私たちにとってはたくさんのうちの一つでも、お客様にとってみればたった一つの菓子です。だからこそ、作るときにはお客様に召し上がっていただくことを念頭に、一つ一つをおろそかにせず、丁寧に作りましようと言い聞かせています。

小田 私たちの仕事でも同じことが言えます。例えば「頑張った自分へのごほうびに」あるいは「記念日を祝うために」など、お客様にとって加賀屋で過ごす時間は特別な時間です。ですから、お客様に加賀屋に泊まってよかったと思っていただけるよう、「笑顔で気働き」をモットーに、お客様が何を望んでいるのか絶えず気を配り、おもてなしに努めております。 三谷先生はたくさんのお弟子さんを育てた経験をお持ちだと思います。その際、どんなことに気をつけていらっしやいますか。

三谷 私の場合は自分自身が手本になるような最高の仕事を見せるしかないと思っています。というのも、工芸の世界では、教えて育てるというのは難しいからです。教えようと思って一生懸命に話しても、理解してもらえない場合も多々あります。理解したからといって、体得できるものでもありません。ですから、こちらが精一杯力を尽くして仕事をして、それをいかに相手が受け取って、自分のものにしていくかにかかっているのです。

柚餅子を育てた輪島塗

小田 育てると言えば、柚餅子は輪島塗に育ててもらったような菓子と言えます。柚餅子は全国各地に行商に出た輪島塗の塗師屋がその作り方を学んで輪島の菓子屋に作らせたのが始まりです。出来上がった柚餅子は、塗師屋が手土産として持って行き、その評価を輪島に持ち帰って、改良につなげたそうです。

中浦 それは興味深い話ですね。

三谷 塗師屋はかつて輪島塗のプロデューサーのような役割を果たしてい ました。全国各地の有力者と付き合い、一流旅館に泊まっては、注文を取ってきたのです。ただ、現在は漆器の出番が減ってしまいました。輪島は日本を代表する漆器産地であり、漆器は素晴らしい文化ですから、この先もずっと守り育てていきたいとは思いますが、売り上げは落ち、後継者も不足し、非常に悩ましい状況です。

小田 次世代につなげていくにはどのようなことが必要でしようか。

三谷 大切なのは前向きに新しいものを作ろうとする意欲だと思います。私が専門とする沈金は漆面に刃物で文様を彫り、そこに金粉や金箱をはめ込む伝統的な技法です。しかし、私は絵画と堂々と渡り合えるような作品を作りたいと、金以外にプラチナ箱、パール粉、着色した金属粉などを使って、色彩豊かな世界を表現しました。その過程では失敗もたくさんしましたし、経済的に困窮し、長いスランプに悩んだこともありましたが、今ではその積み重ねで新たな道を見いだすことができたのだと思っています。

小田 柚餅子の伝統を守り育てるために取り組んでいることはありますか。

中浦 やはり、製造量を維持して仕事を確保し、それによって技術を継承していくことが重要です。そのために菓子として食べてもらうだけでなく、酒の着にしたり、料理に使ったりと新たな食べ方や調理法を提案し、消費の拡大に努めています。また、限られた人相対で会社を運営、発展させていくには、社員みんなに中浦屋は自分の会社であるという意識を持ってもらうこが必要です。そこで、経営情報は可能な限り共有するようにしているほか、店頭でお客様からこんなこ要望があったのでこのように対応したら喜ばれたなど、ノウハウも共有するようにしています。こうした取り組みが積み重なって社員同士の心の共有につなげたいと考えています。

「笑顔で気働き」をモットーに気配りを絶やさない 小田絵里香

これからも新しいものを

小田 お二人の話を聞いて、仕事にかける情熱の大切さをあらためて感じました。とはいえ、私一人の力では旅館 は立ち行きませんし、社員の力添えが必要です。社員の育成にもますます力を入れると同時に、働き続けたいと思ってもらえるような職場づくりをしたいと思います。そうすることで、自ずとおもてなしも向上し、お客様からも評価していただけるのではないでしようか。

中浦 輪島だけでなく、能登全体で人口減少が続いています。そんな輪島に本社を構えて事業を続けていくには今後、販路を市外、あるいは海外に求めることが大切です。国内外でユズに関する商品であれば中浦屋と言われるようなポジションを確立していきたいと思います。のとゆべしにつきましても、能登の食材にこだわって第二弾、第二弾の発売に向け、試作を進めています。ご期待ください。

三谷 私は今年で97歳になりました。 これまでは毎年4つの公募展に参加してきたのですが、これからは活動の場を日展に絞っていくつもりです。それは、中途半端な作品をたくさん作るよりも、数は少なくても時間をかけて自分なりに全精力を注いだ作品を作っていきたいとの思いからです。今でも創作意欲が衰えることはありませんし、一日中、作品のことで頭がいっぱいです。これからも新しいものを追い続けていきたいと思います。

小田 お二人のますますのご活躍に期待しておりますし、私たちもより一層お客様に喜んでいただけるように励んでいきたいと思っています。本日はありがとうございました。

中浦屋わいち本店2階「輪風庵」にて和菓子をいただきながらの対談

中浦屋 本町店店内写真

柚餅子総本家 中浦屋

当店は、輪島銘菓「丸柚餅子」を昔ながらの製法で、ひとつひとつ丹念に手作りしている明治43年創業の老舗です。店内はすべて地元材を使い、拭き漆をほどこしでございます。ぜひご来店ください。

中浦屋わいち本店 [営業時間] 8:00〜18:00(年中無休)
〒928-0001 石川県輪島市河井町わいち4部97番地 TEL: 0768-22-0181(代) FAX: 076-208-0067

輪風庵(中浦屋わいち本店2階) [予約制]
〒928-0001 石川県輪島市河井町わいち4部98番地

中浦屋本町店 [営業時間] 8:00〜17:00(年中無休)
〒928-0001 石川県輪島市河井町1部103番地3

中浦屋 めいてつ・エムザ店[営業時間] 10:00〜19:30(年中無休)
〒920-0855 石川県金沢市武蔵町15-1 めいてつ・エムザ地下食品フロア

輪島塗

輪島塗

石川県輪島市で作られる堅牢で優美な日本を代表する漆器です。職人の手による塗りの作業は入念で、下地から研ぎ、中塗り、上塗りまで124もの工程を費やします。欠けやすい部分に麻布を貼り、下地に輪島で産出する地の粉(理藻土)と漆を練り合わせて塗ることが堅牢さにつながっています。起源は室町時代と伝えられ、江戸時代中期以降、沈金や時絵といった加飾技法が導入され、華やかさを増していきました。

110周年記念限定商品

手間と時間を人と人の間に。

中浦屋が通か昔から手がけてきた柚餅子(ゆべし)は、加賀藩前田家が伝承した、酒看とも料理とも呼べる菓子です。柿子の中身をくり抜いた柏子皮の釜に、 餅粉、砂糖などの餅だねを入れて蒸し、約半年間、自然乾燥させてできあがります。そこに込められる手間ひまの価値は、加賀屋のこれからに欠かせないものです。今回、この餅だねに、地元産のいしるだしを加え、食欲の膨らむ、独特の風味を育みました。香り豊かな深い味わいとともに届けたかったのは、手間と、時間と、人と人の間をつなぐ思いです。ぜひ、ゆっくりとご堪能ください。

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加賀屋 外観

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