加賀屋110周年記念スペシャルトーク 「挑戦」伝統とは革新の連続。飽くなき挑戦を進化の原動力に

米の旨みをぎゅっと凝縮

小田 本日はご多忙のなか、お集まりいただき、ありがとうございます。加賀屋は今年9月10日に創業110周年を迎えます。6月には記念事業の一つとしてオリジナルの日本酒「いと」の販売をスタートしました。ネーミングには、お客様や地域の皆様、取引業者の皆様とのご縁を大切に結んでいきたいとの思いを込めています。製造をお願いした中村酒造様とは古くからのお付き合いで、中村社長や先代とは親子二代で親しくさせていただいております。

中村 佳節にふさわしいお酒にしたいとの思いから、「いと」はとことんおいしさにこだわりました。原料に選んだのは能登・羽咋市産の食味に優れたブランド米で、ローマ法王に献上されたことでも知られる「神子原米(みこはらまい)」です。神子原米は酒米ではなく、食用米です。米の旨みが強い分、発酵させるとそれが雑味や苦みに変わることがあります。そこで、オリジナルの酵母を使い、低温で時間をかけて発酵させさせることで、米の旨みを残しつつ、後味のすっきりとした飲み口に仕上げました。

小田 米の旨みと香りがしっかりと感じられるお酒です。料理と合わせなくても、お酒だけでどんどんいける味わいです。
ところで、お酒や料理に欠かせないのが器です。実は2013年10月に石川県で「全国農業担い手サミット」が開催された際、皇太子殿下が加賀屋にご定泊されたのですが、お食事には田先生の器を使用させていただきました。

徳田 それは光栄です。私は初めて加賀屋に伺った際、ラウンジの大きな窓美しい景色だろうと感激したことを覚えています。その後も宿泊はもちろん、結婚式で招かれたり、講演会に伺ったりと何度もお邪魔させていただき、楽い思い出がたくさんあります。「いと」はおちょこに注いだ途端に高級感のある香りが漂ってきますね。お酒が好きで、いろいろな銘柄を飲んだことがあるのですが、どの日本酒とも違う初めての味わいです。

“赤”を取り入れた作品が私らしさになればと思っています 四代 田八十吉氏

地元ではぐくまれた米を使って本当の“地酒”を醸していきたい 中村太郎氏

任せてくれた父に感謝

小田 ここからは“挑戦”をテーマにお話を聞きたいと思います。私もそうですが、中村社長と田先生も伝統を受け継ぐ一方、新たな取り組みにも挑戦されています。そこにはプレッシャーもあると思いますが、どのように乗り越えてきましたか。

中村 私は33歳で社長に就任しました。父からバトンタッチの話を聞いたときは、まだ早いと断ったのですが、「おれも若い時に社長になったから」と押し切られてしまいました(笑)。伝統を受け継ぐと言っても、おいしい地酒を醸すという会社の志さえ継いでいれば、後は自分で考えてやれという具合でしたから、過度にプレッシャーを感じることはありませんでした。若造で失敗もたくさんしましたが、それが許される年齢でしたし、今となってはいい経験をさせてもらったと思っています。経営に口出しせず、辛抱強く任せてくれた父には感謝したいですね。

小田 なるほど。私は今年4月で社長就任から丸2年が経ちました。昨年は北陸新幹線が開業したおかげで、多くのお客様にご利用いただき、恵まれた時期に事業を引き継いだと思います。ただ、今の状況は神風が吹いているよ 。これからは苦しい局面もあるでしょう。今はその時に備え、しっかり地力を付けなければいけないと気を引き締めています。加賀屋の伝統として何が何でも守っていきたいのは、お客様に喜んでもらうために努力を惜しまない姿勢です。そのためには社員を家族のように大切にしていきたいと考えています。また、父は加賀屋だけでなく、広く地域のことを考えて経営を舵取りしてきました。その精神はしっかりと引き継いでいきたいと思います。
田先生は2009年に人間国宝だった先代が亡くなられ、その翌年に四代田八十吉を襲名されました。会社経営とはまた違ったご苦労があるのではないですか。

徳田 襲名直後は想像以上に注目を浴び、改めて大きな名跡なのだと気付かされました。さらに、2011年に日本伝統工芸展で落選して落ち込み、将来への不安や経済的な困難も重なって、「もう仕事を辞めたい」と自暴自棄になったこともありました。

小田 その後、どのように乗り越えていったのですか。

徳田 2011年の秋、ふと家の前にある田んぼに目をやると、黄金色の稲穂が頭を垂れているのが見え、生命の力強さや美しさに心を打たれました。多くの尊い命が犠牲になった東日本大震災があった年でしたから、なおさらそう感じたのだと思います。そのとき、私ももっと強くならなければいけないと思いましたし、期待してくれる人や喜んでくれる人がいるのだから、その人たちのために頑張ろうと自分に言い聞かせることで、気持ちがすっと楽になりました。ちなみに今お使いいただいているとっくりとおちょこはその稲穂をイメージしたものなんですよ。

小田 色のグラデーションが美しいですね。ところで、お二人は伝統を踏まえつつ、自身のカラーを打ち出すことにも腐心していると思いますが、いかがですか。

中村 私が力を入れているのは“地酒”を造ることです。地方の酒蔵で造ればどれも地酒のように思われるかもしれませんが、本来は酒蔵がある地域で育った原料をその土地の人・水・気候・風土で醸すことが条件だと思います。ですから私は地元の米にこだわりますし、取り組みをさらに一歩進め、石川県産の有機栽培米を使った酒造りにも取り組んでいます。これは有機農産物加工酒類製造業者として認証された酒蔵だけができる酒造りです。日本には150の酒蔵がありますが、この認証を取得している蔵はわずか10蔵ほどしかありません。また、フランス料理の三つ星シェフ、アラン・デュカス氏とコラボレートし、彼が理想とする新しい味わいのお酒も製造しています。こうした取り組みも新たな挑戦と言えます。

徳田 父は、九谷焼の伝統である「五彩(ごさい)」の中から赤を除いた紺青、緑、黄、紫という色彩で独自の作風を確立しましたが、晩年は赤についても熱心に研究していました。その様子を見ていましたから、志半ばで亡くなった父に代わって赤を作品に取り入れることが親孝行になると思い、私も試行錯誤しました。なかなか思うようにならず、諦めかけた時にようやく出来上がったのがJR金沢駅のコンコースに飾られている陶板です。これからさらに研究を重ね、四代と言えば赤と言われるような作品を作っていきたいと思います。

小田 先代もさぞかし喜んでいらっしゃるでしょうね。加賀屋の挑戦としては旅館だけでなく、レストランや洋菓子店の経営、食品やお酒などの物販に取り組んでいることが挙げられます。質の高い商品とサービスを提供し、お客様の暮らしの中に加賀屋が登場する回数を増やしていきたいと思います。昨年10月にオープンした「加賀屋別邸松乃碧(まつのみどり)」も新たな挑戦と言えます。これで和倉温泉に4つの旅館を構えることになり、お客様の奪い合いになるのではと思われるかもしれませんが、それぞれの旅館が違った個性を打ち出すことで、幅広いニーズに応えていきたいと考えています。

同行者との距離を縮めることが旅館の大切な仕事です 小田與之彦

命が続く限り高みを目指す

小田 最後にこれからの抱負を聞かせてください。

中村 今年4月に行われた金沢国税局の酒類鑑評会(吟醸の部)では最高点で優等賞に選ばれ、能登杜氏自醸清酒品評会では2位にあたる石川県知事賞を受賞し、大変励みになっています。また、1月には瓶詰め工場の設備を一新し、香りや鮮度をより高く保つことができるようになりました。これで準備は整いましたから、これからもおいしいお酒を愚直に造り続けていきたいと思います。

徳田 2012年に日本伝統工芸展で4回目の入選を果たし、日本工芸会正会員に認定されました。それまでは父と違う作品を生み出さなければいけないという焦りもあったのですが、その頃からようやく自分らしく作品に向き合えるようになってきました。とはいえ、まだまだ始まったばかりです。これからも、命が続く限り高みを目指していきたいと思います。

小田 私の父は旅館を「明日への活力注入業」と言っていました。私はこれにプラスして、同行者との距離を縮めて差し上げることが大切な仕事だと思っています。また、ありがたいことに加賀屋を人生の節目でご利用いただくお客様が大勢いらっしゃいます。その分、責任は重いのですが、ご期待に添えるよう尽力していきたいと思います。本日はありがとうございました。お二人の今後のご活躍に期待しております。

座談会はJR金沢駅前にある加賀屋グループの料理旅館「金沢茶屋」で行われました。田さんが絵付けしたとっくりとおちょこで「いと」を味わいながらのひとときに、自然と話が弾みました。

中村酒造株式会社

中村酒造株式会社

文政年間(1818〜30)創業。「日榮」の銘柄で知られる。このほか、石川県産の有機米で造った純米酒「AKIRA」、兼六園の八重桜から採取した酵母で発酵させた「兼六桜」など、地元の個性を生かした酒造りに取り組んでいる。

本社
〒920-0867 石川県金沢市長土塀3丁目2-15 TEL: 076-248-2435 FAX: 076-248-2436
(お電話での受付時間は平日9:00〜17:00です。)

事業本部
〒921-8837 石川県野々市市清金 2丁目1(ご来訪の方はこちらへ)

九谷焼

彩釉花器・昇龍(四代 田八十吉作)

石川県の加賀市や小松市、能美市を中心に作られている色絵磁器。17世紀半ば、大聖寺藩主・前田利治が領内の江沼郡九谷村(現在の加賀市山中温泉九谷町)で作らせたのが始まり。この窯は約50年で廃止され、この間に作られたものを「古九谷」と呼ぶ。その後、加賀藩によって再興された。紺青、緑、黄、紫、赤の五彩を駆使し、時に華麗で繊細に、時に力強く大胆に施す上絵に特徴がある。

110周年記念限定商品

いと、うるわし記

「いと」の酒米は、神の名のついたブランド米・「神子原米(みこはらまい)」。能登・羽咋市神子原地区の棚田で生まれた自然の恵みです。機械化や効率化のできない傾斜地で、山あいの冷たい水に磨かれながら、人の手で、丁寧に、手間隙かけて育まれました。ひとつひとつの粒が小さいため、米を削る「精米」の過程では、削り過ぎずに旨みを引き出しています。深みとコクがありながらも、後味は、壮麗で爽やか。
加賀屋百十周年の記念に、こころに記す酒として、ここに。

純米酒 いと

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加賀屋 外観

お客様の満足を第一に考え、お出迎えのときからお帰りになるその時まで、小さな気くばり、心くばりを重ねています。
創業以来培われた「おもてなし」で、いつまでも変わらずお客様に愛され続けています。
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